伝統模様

たまに刺し子の世界では、
「伝統的な模様は裏側も美しい」
と謳う方がいますが、
"伝統的"だからではなく、"幾何学模様"に基づいているか否かなのですよね。
現代的なものでも、幾何学模様であれば裏側も美しい模様が現れます。

一般的に、「伝統模様は幾何学模様に基づくものが多いためその傾向が強い」
ということなのです。

なので、言い換えるとすれば、
「幾何学模様は裏側も美しい」
ですね。


では、なぜ伝統模様に幾何学模様が多いのだろうか。

例えば、中近東の遊牧民のあいだで伝わる伝統的な織物キリム柄は、多様な幾何学模様によってデザインされています。イスラム教を信仰する地域では偶像崇拝が禁止されているため、植物や動物、景色などは具象的なモチーフではなく幾何学模様で表されています。

日本の伝統模様に幾何学模様が多用されている理由までははっきりとわかりませんが、
単純な線、点、面から構成され、それが繰り返される文様が美しいと感じる感性も大きな要因かと思われます。
そして、この感覚は普遍的なもので時代を問わず受け入れられてきたからこそ、現代まで伝統模様として伝わっているのだと思います。
また、そこに人々の願いや想いを込められたことで模様に意味付けがなされ、より一層定着したのだと思います。


「伝統的なものは現代的なものよりも優れている」
という(ニュアンスの)声は、稀に民芸や伝統工芸などの世界で耳にします(逆も然り)。
保守的な思想は大事だと思う一面もありますが、極端な思想は新しい創造を阻害してしまうこともあり、それがもったいないと感じます。

古き良きものも後世に残す必要はあります。
そういう大切なものも守りつつ、
新旧に優劣をつけず、新しい価値観を否定しない世の中になると、色々な意味でヒトもモノも開けた世界になると思っています。

自分は、
「どっちもいいね、素敵だね」
と言える人でありたい。


ちなみに、
写真は日本の伝統模様や幾何学模様の定番である「麻の葉模様」の布巾。
10年以上前に母が作り、私が嫁に行く時に渡してくれたもので、とても大切にしている布巾の一つ。


2022.9.13
AYUFISH int.

AYUFISH int.

Textile design by sashiko 刺し子によるテキスタイルデザイン

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